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風が吹けば桶屋が......でよいのか

2024年01月24日

尾灯

編集長
舟橋 良治

 米大統領選は黒人やヒスパニックなどマイノリティーの動向が無視できない。中澤研究員が「『非白人』に広がる民主党離れ~米大統領選、バイデンに逆風」(1月17日付リポート)で紹介しているが、昨年10月からのパレスチナ情勢も少なからぬ影響が出てきそうな雲行きだ。

 パレスチナ人犠牲者はイスラエルの10倍を超え、非難はアラブ諸国だけでなく欧州、米国にも拡大。CNNなどが昨年10月に米国で行った調査によると、「ハマスの攻撃に対するイスラエル政府の軍事的対応は正当性があるか」との問いに「完全に正当性がある」と回答した18~34歳の若い世代は27%にとどまった。65歳以上は81%。50~64歳は56%、35~49歳は44%だったから若い世代ほどパレスチナ支持が多い。

 若者は人権や差別に敏感で抑圧されている人々に共感する傾向が強いのが一般的。パレスチナ支持のデモにも多数参加している。

 米国政府は歴史的な強い結びつきからイスラエル支持を崩さないものの、バイデン大統領はパレスチナ支援デモなど世論の動向を見て軌道を微妙に修正。人道への配慮や停戦の必要性を訴えた。ただ、この変化がデモに参加する若者に響いているかどうか。

 米国民の25%を占めるキリスト教福音派は強固なイスラエル支持の"トランプ派"が多い中、バイデン大統領は再選に向けて民主党支持や無党派の若者票に期待する。そうした若者票が離れればイスラエル寄りのトランプ氏が勝利する可能性が高まる。「抑圧される者への共感」から行動した若者は、「風が吹けば......」のことわざのごとき、「トランプ桶(おけ)屋」がもうかる事態に納得できるのだろうか。

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舟橋 良治

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この記事は、2024年1月4日発行のHeadLineに掲載されました。

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